ロースクールのサマースクール生活~その1~

アメリカロースクール留学入門

今回はロースクール開始前に参加したサマースクールの状況をダイジェストでお届けします。
2011年7月のことなので細かな点は変わっているかもしれませんが、基本的には同じはずです。
このサマースクール、大学によって期間は様々ですが、うちのロースクールは4週間と比較的短めでした。
単位が割り当てられるわけではないのと、必須という訳ではないので、気楽に参加してよいのかもしれませんが、何しろアメリカで受ける最初の授業ということなので、かなり緊張して臨んだことを覚えています。

Day1

サマースクールの授業は2時間弱X2コマで、毎日9時から13時くらいまで続きます。
初日の授業は、最初に簡単なイントロがあったのちに、50分のビデオを鑑賞しました。内容は黒人の参政権獲得の歴史についてのもので、見終わってからサマリーを作成するよう指示されました。その後、作成したサマリーを使って2コマ目に3分間ほどでプレゼンをしました。

アメリカの授業はインプットとアウトプットと両方がセットになっているのが特徴です。
一方的に話を聞くだけでなく、この後の授業でも必ず何かしら発表を求められました。

Day2

2日目は、初日と違ってレクチャーが中心でした。もっとも、レクチャー中も質問されるので油断はできません。ここでもアウトプットが求められていますね。全部英語なので、2コマの授業でもかなり集中力が必要です。

サマースクールといってもロースクールが主催するものなので内容は法律関係のものが主です。
この日は、Brown v. Board of Educationという判例について学習しました。
この判例は、黒人と白人を別々の学校に分けて学ばせるという州の方針が違憲であると判示した画期的な内容です。

わずか50年ほど前の事件なんですが、そのころは人種差別が社会的な問題だったということがよく分かりますね。今でも取り上げられることの多い判例なので、今でも人種問題はアメリカ社会で大きなウェイトを占めているようです。

Day3

3日目はPlagiarismについての授業でした。「盗作」とか「盗用」という意味ですね。
日本の大学でもそうですが、アメリカではPlagiarismを行ったとみなされると単位剥奪や退学などの厳罰の対象となります。

それだけでなく、将来のキャリアにも重大な悪影響があるので絶対にしてはいけません。
意図的にやるのは論外ですが、気を付けないといけないのは意図せずに盗用してしまう場合です・・・アメリカは一部の州を除いてcommon lawなので、論述試験などで規範定立のために判例や論文を引用することが必要です。その際、引用であると明示せず、自分の文章であるように書くだけでアウトになります。

それだけでなく、将来のキャリアにも重大な悪影響があるので絶対にしてはいけません。
意図的にやるのは論外ですが、気を付けないといけないのは意図せずに盗用してしまう場合です・・・アメリカは一部の州を除いてcommon lawなので、論述試験などで規範定立のために判例や論文を引用することが必要です。その際、引用であると明示せず、自分の文章であるように書くだけでアウトになります。

これを避けるための方法としてquotationやcitationといった引用手法が確立されているのですが、細かなルールが細かくこれをマスターするのはなかなか骨が折れます。しかし、こちらの法曹界では必須のテクニックなので、避けては通れません。ちなみに、引用ルールがまとめられた本を通称ブルーブック(Blue Book)といいます。

Day4

4日目の授業では判例検索法や米国の司法制度について習いました。上述の通りアメリカは判例法の国なので過去の判例の理解が非常に重要です。昨今はITの発達によって判例検索も容易になってきましたが、昔は膨大な書籍の中から調べなければならなかったため非常な労力が必要だったようです。

Day5

5日目です。サマースクールは2週間なので、今日が終わると前半終了です。
この日はノートの取り方についてのレクチャーでした。そもそもの聞き取りが怪しいのですが、ノートがないとテストを乗り切れないので効率的なノートテイキングの技術を身に着ける必要があります。

ちなみに、アメリカの大学ではPCでのノート取りが主流なので、タイピングのスピード向上も重要になります。

ロースクール開始に向けて履修科目も考え始めないといけないのがこの時期です。仕事上必要な契約法と会社法は必須として、それ以外に何を取るかという観点で選定を行うことにしました。

Day6

6日目は、アサインメント(宿題)で読むことになっていた判例を題材として、ロースクールの模擬講義が行われました。俗にいうソクラテスメソッド(Socratic Method)という方法が用いられた講義です。
ソクラテスメソッドとは、教授が生徒に対し判例の内容について、事実関係、判決要旨、判決理由などの様々な観点からの質問を次々に投げかけて、その質疑応答の過程で理解を深めるというロースクールの定番です。

模擬講義の後は、リスニングスキル向上のために、TVインタビューのサマリー作成に取り組みました。
日本の英語学習法でも採用されているようで、語学の学習には特別な方法はないことがよく分かります。

Day7

サマースクールの7日目も判例の読み方について学習しました。
アメリカでは、日本以上に過去の判例が重視されるのですが、司法制度が連邦と州で異なるうえに、連邦と各州ごとに地方裁、高等裁、最高裁などの裁判所が設置されているためどの判例が適用になるのかを考えるかだけで一苦労です。

Day8

8日目はこれまでの座学ではなくキャンパスの外に出て裁判所見学に行きました。
この日の訪問先は、田舎の小規模な裁判所で、隣に刑務所も設置されています。
取り扱う事件は主に飲酒運転などの軽犯罪ということですので、刑事版の簡易裁判所といったところです。

ちょうど裁判前手続の進行中でしたが、複数の案件を並行処理していて雑然としていました。
被告人が事実関係を認めている場合は、即日結審することもあるようなので、日本とはかなりスピード感が違います。

その後は刑務所も見学しました。
言うまでもなく囚人が収監されているので、貴重な体験ができました。
なんでも、囚人のプライバシーはかなり制限されており、風呂やトイレ以外はカメラで監視されているようです。

Day9

この日はロースクールの授業でどのような回答が求められるか、次の例題をもとにレクチャーを受けました。

「尻尾も脚であるとしてカウントすると馬の脚は何本になるか?」
素直に考えると5本という回答になりますが、これだけでは評価されません。問題提起と規範定立をしたうえで、自分なりの事実分析と規範へのあてはめを行って結論を導くことが求められます。

例えば、次のような感じです。
「ここで問題となっているのは馬の脚の数え方である。与えられた規範では尻尾を脚としてカウントすることになるが、これは適切な規範であるといえるのか。両者は外見も機能も全く異なるのであるから、尾を脚として数えることは合理的であるとは言えない。そのため、尻尾を脚として数えないことが適切な評価であり、これに基づくと馬の脚は4本である。」

異論も多くあると思いますが、このように自分なりの理論と分析を示すことが重要です。もちろんこれ以外の議論を展開して5本と結論付けても構いません。
大事なことは、いかに精緻に分析したかを示すことです。

ちなみに、これはあくまでも例題なので、ロースクールの本番の授業ではこういった問題は出ません。
規範の部分が法律や判例になるため、それらの理解が重要です。

Day10

10日目のこの日は、実際にロースクールの試験のサンプル問題に取り組みました。
試験の種類はopen-bookといわれるものとclose-bookという2形態があり、持ち込み可か不可かの違いです。

この日の問題は前者だったんですが、ノートやテキストを持ち込めても与えられた事実関係に関係する判例を探したり、改めてその内容を確認しているとあっという間に時間が過ぎていきます。
そもそも、この事実関係というのが非常に複雑にできていて、当然のことながら英語で書かれているので、それを把握するだけでも一苦労です。

何とか、法令の規範を基に事例をあてはめ、簡潔に結論をまとめて終えたのですが、内容にはまったく自信が持てない出来でした。最初なので仕方ありませんが、本当の試験までにある程度は実力を上げなければなりません。

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